スポンサーリンク

上記の広告は、30日以上更新がないブログに表示されています。
新たに記事を投稿することで、広告を消すことができます。  

Posted by だてBLOG運営事務局 at

2015年12月09日

私は世のヨっちゃん、妹は華のハナちゃん

繁華街

朋ちゃんのいとこのお姉さんのお店は、甲府市の繁華街の中心にあった。
外観もおしゃれで、私は、ワクワクしてくる。事前に、朋ちゃんに連絡してあったので、今頃、店の中で待っていてくれるだろう。そう思って、リキが駐車場に車を止めている間、
回りを見ていると、朋ちゃんが、何かを抱えて、店に入っていくのが見えた。
呼びかけようとしたが、朋ちゃんからも、私の姿が見えていた距離なのに、スルーされて、声をかけそびれた。
「なんか、ヘンなの・・・」
お店の扉には、カラーコンタクトのポスターがきらびやかに飾ってあった。
私とリキが、店に入ると、女の子の声が聞こえてきた。
「ヨっちゃん、これ、お母さんからお弁当」
そういって、先程の包みを渡しているのは、朋ちゃんだ。そして、受け取っているほうも・・・
朋ちゃんだった。
「ええ?」
私が驚くと、朋ちゃんが、にっこり笑った。大人っぽい朋ちゃんだ。
「お久しぶり、ケイちゃん、リキさん。妹の朋華(ともか)です。ハナちゃん、ご挨拶は?」
朋華と呼ばれた妹は、幼いほうの朋ちゃんだった。
そして奥の方から現れた、グレーのワンデーアキュビューディファインをした人が朋ちゃんのいとこと紹介された。
「いとこの三月(みつき)姉さん」
「三に月ときたか~」
リキのつぶやきに、私は、彼の脇腹をつねる。
「あの、三人とも、とてもよく似てらっしゃるのね。朋ちゃんとこは、二人とも朋なの?」
「そうそう、だから、家族もわかりにくくて、私は世のヨっちゃん、妹は華のハナちゃんで呼び分けてるの。変でしょう」
私が学校で見た三人が、そこに揃っていて、クラクラする。
「まさか、三人で一人とかいう・・・」
「ああ、そういう遊び、昔はしたけどね。私たち三人、年も近いし」
「いや、今も・・・」
そう言いかけたところで、リキが笑った。
「月の好きな一族ですね。みんな月がついている」
「これは、祖母の趣味で。自分が竹(たけ)って名前だから、若い頃からかぐや姫だと言い張って、子供や孫に月を付けまくったの。早く月からお迎えがこないかしらって皆で笑ってるのよ」
朋ちゃんのジョークに笑っていいものかどうかわらなかったが、リキが大笑いしているので、同じく笑っておいた。なんだか煙に巻かれた感たっぷりだった。  


Posted by 弘せりえ at 10:25Comments(0)短編

2015年12月06日

資格取得と、就職に向けて、いっせいに動き出す

勉強

12月のテストを終えると、来年の春の資格取得と、就職に向けて、2年生はいっせいに動き出す。私は、都内で仕事を探すことにしていたが、朋ちゃんは、都内の就職説明会に行かないという。
「どこか違うところで就職探すの?」
私が尋ねると、朋ちゃんは大かたの姿である、大人っぽい表情で、答えた。
「実家が宮城だから、そっちで就職探すか、なければ、いとこの姉の店の一角を借りて、ネイルアートで自営業するんだ」
「へぇ、朋ちゃん、宮城出身だったんだ」
まずは、朋ちゃんが今、一人暮らしだということに驚いた。リキの説では、まるで双子の姉妹が近くにいるような感じだったのだが、奴の予想は得てして、こういうふうに外れる。
「いとこのお姉さんは、なんのお店してるの?」
「カラコン屋さん。宮城では、まだカラコンの店舗自体が少ないから、お客さんの出入りも多いみたいだし、最初はいとこのお客さんから広げていこうかな、と」
「それ、すごくいいアイディアだよ。わざわざ就職しなくたって、スペースと、お客さんが確保できてるんだから、そっちにしたら?」
私が言うまでもなく、朋ちゃんは、資格試験だけを受けると、就職しないまま、宮城に帰っていった。
春の試験で、私はなんと、資格取得に失敗した。何回かいろんな資格が取れる時期があるのだが、就職に一番有利な資格取得を逃して、茫然としていた。
そんな時、リキが、週末ドライブの旅に出よう!と言ってくれた。そして、同時に、朋ちゃんから、宮城のお店で、ネイルアートの仕事を始めました、と葉書きが届いた。
朋ちゃんの名前は朋世、とある。そうか、そういえば朋世さんだったな、と思い出す。
「宮城まで、ドライブしちゃお!」
私の提案に、リキは、賛成してくれた。  


Posted by 弘せりえ at 10:15Comments(0)短編

2015年12月03日

体がふたつって意味もあるだろ

双子のような鏡の自分

「ケイコはオレのこと、リキって呼ぶけど、オレ、本名、力(ちから)じゃん。だから力って呼ばれる時は、キャラ違うもんね」
子供の言いわけみたいな調子のリキに、私は笑ってしまう。
「ひょっとして、力って呼ばれたら、もっと頼りがいがあるとか?」
「失礼だな、リキのほうが少年っぽくて、力になると、社会人っぽいってことだ」
「じゃ、これから、力って呼ぶ」
「バカ、よせ、しんどい」
リキのノリに私が笑っていると、リキは少しまじめな顔で言った。
「でも、二重人格とか三重人格とかあるかもよ。オレ、その朋って漢字が気になってたんだ」
「え? 月をふたつで、朋って漢字?」
「そう、月偏って、別名、肉づき偏ともいって、体にまつわる漢字に多いんだ。たとえば、
腰とか腹とか胸とか」
私は妙に納得する。
「本当だ、脚とか膝も」
「だから、月をふたつ持っている朋ちゃんは、体がふたつって意味もあるだろ」
「え?双子とか?」
「漢字の意味だけだよ。実際、そうなら、全国の朋がつく名前の人がみんな双子になっちまう」
「それはないと思うけど」
私が、軽く流すと、リキは、わざと深刻そうな顔をして言った。
「だけど、そういう人もいるかもしれない。双子の片方が亡くなって、親が二人分、幸せになってほしいから、朋に生きると書いて、朋生(ともお)と名付けたとか」
「全国の朋生さんに、申し訳ないよ、そんな偏見」
「だから、例えば、だってさ。しかも、ケイコの知っている朋ちゃんには、明らかに、2人、もしくは3人のキャラがある」
「3人の場合は、どう解釈するわけ?」
私が尋ねると、リキは神妙な顔をして考えた。
「日は2つになると昌、3つになると晶・・・」
「木だって、林、森、だよ」
「なんか、漢字テストみたいだな」
集中力のないリキは、そういって、話を切り上げた。
私の中では、なんとなく、消化不良な状態で終わった。  


Posted by 弘せりえ at 10:05Comments(0)短編

2015年11月30日

他の大学と違うのは、入ってからが大変ということ

ネイル

うちの専門学校に、朋ちゃんという女の子がいる。
私はコンピューターを専攻しているのだが、朋ちゃんは、ネイルアートを専攻している。
全く違う業種を取りまとめて、資格取得、就職につなげる、うちの専門学校は、今の就職氷河期には、革新的な存在で、しかも入試がなく誰でも入学できるものだから、マンモス校と化している。が、他の大学と違うのは、入ってからが大変ということだ。誰でも入学できるが、相当がんばらないと資格は取れない。だから、2年のうちに、学生の人数は半分近く減る。淘汰されるのが、入試の段階ではなく、勉強していく過程というのが、外国の大学のようで、私は気に入っている。
あまりに人数が多い1年目は、専攻が違う朋ちゃんに気が付かなかった。
2年生になって、共通項目の授業(社会人マナーとかを勉強する授業)で、一緒になった上、苗字が同じタ行だったので、席が近くなった。普通の席は適当だが、テストの時は、苗字順に座らされる。
授業で、ちょくちょく見かける朋ちゃんは、大抵大人っぽくて、艶っぽくて、そしてどこか疲れた感じのする子だった。
が、試験の日、朋ちゃんは、まるで高校生のように幼く見えた。
その日は、気のせいかな、と思っていたが、じっくり観察しているうちに、朋ちゃんの雰囲気が日によって、明らかに違うことに気がついた。
一番多いのは、大人っぽい朋ちゃん。7割方占めていた。残りは幼い朋ちゃんと、あと、
見知らぬ朋ちゃん。見たこともない雰囲気の朋ちゃんは、ほんのわずかだけど、姿を現す日があった。
私は、彼氏のリキに、その話をした。
リキは、社会人で、ちょっと頼りないけどとても面白い男子だ。
「それは、オレだってそうだよ」
リキの意見に、私は「はぁ?」と首をかしげた。  


Posted by 弘せりえ at 10:55Comments(0)短編